脂腺増殖症とは
鏡を見たときに、「頬やおでこに白いポツポツが増えてきた」「ニキビではない小さなできものが消えない」と感じたことはありませんか?
それは脂腺増殖症(しせんぞうしょくしょう)と呼ばれる良性の皮膚のできものかもしれません。
脂腺増殖症(しせんぞうしょくしょう、sebaceous
hyperplasia)とは、頬・おでこ・鼻などの皮脂腺が多い部位にみられる白色〜黄色の小さなできものです。
大きさは数mmほどのことが多いですが、5mm以上になる場合もあります。よく見ると中央が少しくぼんでいるのが特徴です。
1つだけできることもあれば、顔全体に複数みられることもあり、ホクロやニキビ跡と間違われやすい良性の皮膚腫瘍です。
「顔に白いポツポツが増えてきた」「ニキビではないできものが消えない」「おでこや鼻に白いイボのようなものがある」
このような症状を感じている場合、脂腺増殖症の可能性があります。
脂腺増殖症の特徴
脂腺増殖症は、その名の通り皮脂を分泌する皮脂腺が過剰に増殖してできた良性のできものです。
皮脂腺が多い頬・額・鼻によくみられ、オイリー肌の方や中高年の男性に多い傾向がありますが、女性や若い世代にもできます。
ダーモスコピー(拡大鏡)で観察すると、王冠状(crown
vessels)と呼ばれる特徴的な血管パターンが見られ、さらに増殖した皮脂腺が透けて見え診断できます。
病理組織検査では、肥大した脂腺が毛穴周囲を取り囲むように、ぶどうの房状に増殖しているのがわかります。
脂腺増殖症の原因
脂腺増殖症のはっきりとした原因は不明ですが、次のような要因が関係していると考えられています。
- 紫外線による皮脂腺への刺激
- 男性ホルモン(アンドロゲン)の影響
- 加齢
- 免疫抑制剤(シクロスポリンなど)の内服
特に、長年の紫外線刺激やホルモンバランスの変化によって皮脂腺が活発になり、脂腺増殖症になると考えられています。
脂腺増殖症と似ているもの
色素性母斑(ホクロ)
ホクロの顔にできるタイプでミーシャ(Miescher)型と言われるホクロは、白~黄色であり脂腺増殖症に似ていることがあります。ホクロでは毛が生えていることもあり、ダーモスコピーで見分けることができます。
詳細は色素性母斑(ホクロ)のページをご覧ください
脂漏性角化症(老人性イボ)
表面ががさがさしているイボになります。紫外線によってできるのでシミとともにたくさん顔に見られることがあります。
詳細は脂漏性角化症(老人性イボ)のページをご覧ください
稗粒腫
白い小さいできもので、目の周りにできやすいできものです。細い針を使って比較的簡単に除去することができます。
詳細は稗粒腫のページをご覧ください
粉瘤
皮膚に皮脂や角質の入った袋ができてしまうできものです。小さい粉瘤はイボのように見えることがあります。
詳細は粉瘤のページをご覧ください
汗管腫
目の周りにできやすいできもので、目の下に多発することがあります。
詳細は汗管腫のページをご覧ください
脂腺増殖症の治療
脂腺増殖症は自然に消えることはほとんどないため、気になる場合は皮膚科での治療が必要です。治療方法としては、①手術、②サージトロン・レーザー治療、③イソトレチノイン内服、④ポテンツァのワンニードル(アグネスモード)などがあります。治療法は大きさや数によって異なります。液体窒素で治療することもできますが、少し小さくなるだけで除去はできないので当院ではあまりおすすめしておりません。
①手術(切除)
5mm以上の大きな脂腺増殖症には、切除手術による除去が推奨されます。
脂腺増殖症は根が深く、浅い切除では再発しやすいため、しっかりと取り除くことが重要です。
②サージトロン・レーザー治療
5mm未満の大きさの脂腺増殖症はサージトロンによる治療を行います。局所麻酔後に、サージトロンや手術用のハサミ、ピンセットを使い、脂腺増殖症の部分を丁寧に除去します。術後は、テープ保護が2週間ほど必要です。
当院では、熱ダメージを最小限に抑え傷が目立たなくなるように、サージトロンと手術用ピンセットを使用した特殊な除去の仕方をしております。
サージトロン治療についてはいぼ、ほくろの除去手術のページもご参照ください。
③イソトレチノイン内服
ニキビの治療でも使われるイソトレチノイン(ビタミンA誘導体)の飲み薬ですが、皮脂腺を縮小させる効果があるため、脂腺増殖症を小さくしたり、なくしたりすることができます。脂腺増殖症が多発している方やニキビも気になる方におすすめです。
イソトレチノインについてはイソトレチノイン内服療法のページもご参照ください。
④ポテンツァ ワンニードル(アグネスモード)
多発する脂腺増殖症には、ポテンツァ ワンニードル(アグネスモード)による高周波(RF)治療もおすすめです。極細の針先から高周波の熱エネルギーを照射し、皮脂腺の増殖部位をピンポイントで焼灼していきます。
肌表面へのダメージを最小限に抑えながら、内部の皮脂腺を少しずつ減らしていく治療で、複数回の施術で徐々に縮小していきます。
切除まではしたくない方や、広範囲に多数ある脂腺増殖症に適した方法です。
ポテンツァ ワンニードルについてはポテンツァのページもご参照ください。
脂腺増殖症の予防やスキンケア
脂腺増殖症は一度できると自然に治ることは少ないため、新たにできるのを防ぐ・悪化を防ぐスキンケアが大切です。
① 皮脂コントロールを意識したスキンケア
脂腺の過剰な活性化を抑えるためには、以下の成分を含むスキンケアがおすすめです。
- アゼライン酸:皮脂分泌を抑えつつ、毛穴詰まりや炎症を防ぐ作用があります。ニキビや脂性肌のケアにも有効で、脂腺増殖症の発生を抑える可能性があります。
- レチノール・トレチノイン:皮膚のターンオーバーを促進し、皮脂腺を小さく保つ働きがあります。継続使用により、新しい脂腺増殖症ができにくくなると考えられています。
これらの成分を含むスキンケアを取り入れることで、皮脂腺の肥大を抑え、再発予防に役立つことがあります。
② 紫外線対策を徹底する
紫外線(特にUVA)は皮脂腺の肥大化を促し、脂腺増殖症の悪化因子になることがわかっています。
以下の対策を毎日行いましょう。
- SPF30以上・PA+++以上の日焼け止めを毎日使用する
- 屋外では日傘・帽子・UVカット衣類を活用する
- 日焼け止めはこまめに塗り直す(2〜3時間ごと)
紫外線対策は、脂腺増殖症だけでなく、しみやたるみ予防にも有効です。
当院の症例
症例1 【30歳代女性】右こめかみの脂腺増殖症
右こめかみの脂腺増殖症をサージトロンにて除去しました。
| 施術 | サージトロンによるイボ治療 |
|---|---|
| 費用 |
1つ (2mm以上) 10,780円(税込) 本施術では1つ・総額10,780円(税込) |
| 副作用・リスク | 内出血・腫れ・再発など |
症例2【40歳代女性】右頬の脂腺増殖症
右頬の脂腺増殖症をサージトロンにて除去しました。
施術後1ヶ月後で少し赤みが残るのみで除去できています。
| 施術 | サージトロンによるイボ治療 |
|---|---|
| 費用 |
1つ (2mm以上) 10,780円(税込) 本施術では2つ・総額21,560円(税込) |
| 副作用・リスク | 内出血・腫れ・再発など |
費用 税込です
| 脂腺増殖症除去(健康保険適用) | 3割負担 約7,000円〜14,000円 | |
|---|---|---|
| いぼ除去(自費の場合) | 2mm未満 | 2つで 10,780円 |
| 2mm以上 | 10,780円 | |
脂腺増殖症に関するよくある質問
Q1. 脂腺増殖症は自然に治りますか?
A. 基本的に自然に消えることはありません。経過とともにやや平坦化することはありますが、完全に消失することはまれです。気になる場合は皮膚科での治療が必要です。
Q2. 顔にたくさんある場合、どの治療が向いていますか?
A. 多発する場合は、ポテンツァ(ワンニードル/アグネスモード)やイソトレチノイン内服による皮脂腺の縮小治療がおすすめです。
顔全体に多数ある場合でも、肌表面へのダメージを抑えながら少しずつ改善することができます。
Q3. 脂腺増殖症をつぶしても大丈夫ですか?
A. 自己処理は厳禁です。つぶしても内容物が出ないことが多く、炎症や色素沈着、瘢痕の原因になります。医療機関でのサージトロンやレーザー治療が安全です。
Q4. 一度治療すれば再発しませんか?
A. 脂腺増殖症は皮脂腺の一部が残ると再発することがあるため、しっかりと除去することが大切です。また、皮脂腺の性質上、新しい部位にできることもあります。再発予防には、皮脂コントロールや紫外線対策が重要です。
Q5. スキンケアで改善できますか?
A. スキンケアで完全に治すことは難しいですが、新たな発生や悪化の予防はできる可能性があります。アゼライン酸やレチノールを取り入れたケアがおすすめです。
Q6. ヨクイニンは効きますか?
A. 脂腺増殖症にヨクイニンは効果がありません。ヨクイニン(ハトムギエキス)はウイルス性イボ(尋常性疣贅など)に効果が期待できる生薬であり、脂腺の増殖とは無関係です。脂腺増殖症の改善には、レーザーや高周波治療など皮膚科での処置が必要です。
Q7. 脂腺増殖症のレーザー治療後に注意することは?
A. サージトロンやレーザー治療後は一時的な赤みが生じることがあります。治療部位は擦らず、紫外線を避け、保湿をしっかり行ってください。
まとめ
脂腺増殖症は見た目がホクロや稗粒腫、脂漏性角化症と似ており、自己判断が難しいできものです。
放置しても自然に治ることは少なく、皮膚科での正確な診断と適切な治療が大切です。
サージトロンやポテンツァによる治療は、傷跡を最小限に抑えつつ再発を防ぐ効果が期待できます。
また、日常のスキンケアとしてアゼライン酸やレチノールを取り入れ、皮脂コントロールと紫外線対策を心がけましょう。



