コラム

2025.04.11 コラム

そのかゆみとフケ、“脂漏性皮膚炎”が原因かも?意外と知らない皮膚の炎症

「最近なんだか頭皮がかゆい」「小鼻や眉間が赤くてカサカサする」「毎日洗っているのにフケが止まらない」…そんな肌の不調を、“乾燥”や“体質のせい”と諦めていませんか?

もしかすると、それは「脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)」という皮膚の炎症が原因かもしれません。

脂漏性皮膚炎とは?

脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)は、頭皮や顔、耳のまわりなど皮脂の分泌が多い部分(脂漏部位)に、かゆみや赤み、フケのような皮むけが現れる慢性的な皮膚の炎症です。

特に、頭の生え際や小鼻の横、眉間、耳まわりなどに、黄色~白色のかさつき(脂性鱗屑)が見られるのが特徴です。

日本では成人の3~4%が発症しているとされ、非常に一般的な疾患です。

原因は、皮膚の常在菌であるマラセチア菌の増殖皮脂分泌のバランス異常栄養不足乾燥ストレスなど多岐にわたります。

「洗ってもフケが取れない」「スキンケアをしても赤みが消えない」といった悩みの裏に、この皮膚炎が隠れていることも少なくありません。

脂漏性皮膚炎は、自然に治ることもありますが、多くの場合は再発を繰り返します。

そのため「完治」よりも「うまく付き合っていくこと」が治療の基本方針です。

見た目の変化やかゆみによるストレスも大きいため、正しい知識を持ち、早めに皮膚科での診断・治療を受けることが重要です。

脂漏性皮膚炎の症状は体幹にも

また、脂漏性皮膚炎は体幹では胸の中央(前胸部)や背中の中央に、同様の湿疹が左右対称に現れることもあります。

頭部や顔だけにとどまらないのが脂漏性皮膚炎の特徴です。

最初は「乾燥してるだけ」と見過ごされがちですが、放置すると炎症が進行し、日常生活に支障をきたすこともあるため、早めの対処が重要です。

脂漏性皮膚炎の原因

脂漏性皮膚炎の主な原因は、皮膚に常在するマラセチア菌(カビの一種)の増殖と、それに伴う皮脂の過剰分泌です。

マラセチア菌は皮脂を栄養源としており、皮脂の分泌が多い部位で活発に増殖します。この菌が皮脂に含まれるトリグリセリドを分解し、遊離脂肪酸を生成します。

この遊離脂肪酸が皮膚を刺激し、炎症を引き起こすと考えられています。 

また、以下の要因も脂漏性皮膚炎の発症や悪化に関与しているとされています。

  • ホルモンバランスの乱れ:特に男性ホルモン(アンドロゲン)の影響で皮脂の分泌が増加し、脂漏性皮膚炎のリスクが高まります。
  • 栄養不足:ビタミンB2やB6の不足が皮脂の代謝異常を引き起こし、症状を悪化させる可能性があります。
  • 生活習慣の乱れ:ストレス、睡眠不足、食生活の乱れなどが皮脂分泌を増加させ、マラセチア菌の増殖を促進することがあります。
  • 環境要因:季節の変わり目や湿度の変化なども、皮膚の状態に影響を与え、脂漏性皮膚炎を引き起こす一因となります。

これらの要因が複合的に作用し、脂漏性皮膚炎の発症や悪化につながると考えられています。

そのため、日常生活でのストレス管理や栄養バランスの取れた食事、適切なスキンケアが予防や症状の軽減に重要です。

脂漏性皮膚炎の診断

脂漏性皮膚炎の診断は、主に問診視診によって行われます。​

皮脂の分泌が多い部位(頭皮、顔、耳の周囲など)に特徴的な赤みや鱗屑(フケ)の症状が見られる場合、脂漏性皮膚炎が疑われます。 ​

しかし、脂漏性皮膚炎は他の皮膚疾患と症状が似ているため、以下の疾患との識別が重要です。

  • 乾癬(かんせん):​頭皮や体に赤い発疹と厚い鱗屑が特徴的です。
  • 接触皮膚炎:​特定の物質に触れた後に発症する皮膚炎で、原因物質との接触歴が診断の手がかりとなります。​
  • アトピー性皮膚炎:​慢性的なかゆみと湿疹が特徴で、個人や家族のアレルギー歴が関連します。​

これらの疾患との鑑別が難しい場合、以下の検査が行われることがあります。

  • パッチテスト:​接触皮膚炎が疑われる場合、原因物質を特定するために行います。 ​
  • 皮膚生検:​乾癬など他の疾患との鑑別が難しい場合、皮膚の一部を採取して詳しく調べます。

脂漏性皮膚炎の症状が現れた場合、自己判断せず、皮膚科専門医の診察を受けることが重要です。

脂漏性皮膚炎の治療法

脂漏性皮膚炎の治療は、「炎症を抑えること」と「原因菌(マラセチア菌)の増殖を抑えること」が中心となります。ファラド皮膚科では、症状の程度に応じて外用薬を中心とした治療を行っています。

具体的には、皮膚の炎症を抑えるためにステロイド外用薬を短期間使用しつつ、再発予防として抗真菌薬(マラセチアに効果がある薬)を用いた外用治療を継続的に行うことが推奨されています。

症状が強い場合には、必要に応じてステロイド外用薬と抗真菌薬を併用します。

頭皮の症状に対しては、抗真菌成分を含むシャンプーを使用することも効果的とされています。

これにより、フケの軽減や頭皮のかゆみの改善が期待できます。

また、脂漏性皮膚炎は「完治」よりも「うまく付き合っていく」ことが大切な疾患とされており、再発しやすいことを前提に定期的な外用治療やスキンケアの見直しを行うことが勧められています。長期的には、生活習慣の見直しやストレス管理も重要なポイントです。

脂漏性皮膚炎の予防と対策

脂漏性皮膚炎の予防と症状の軽減には、日常生活での適切なスキンケアと生活習慣の見直しが重要です。

以下のポイントを参考にしてください。​

1. 皮膚を清潔に保つ

  • 正しい洗顔・洗髪の実践:​皮脂の分泌が多い部位を清潔に保つため、適切な方法での洗顔や洗髪が大切です。洗顔料やシャンプーは低刺激性のものを選び、強くこすらずに優しく洗いましょう。
  • 整髪料の選択:​油分の多い整髪料は皮脂の増加を招く可能性があるため、使用を控えるか、油分の少ない製品を選ぶと良いでしょう。

2. 生活習慣の改善

  • バランスの取れた食事:​ビタミンB群(B2、B6など)の不足が脂漏性皮膚炎に関与している可能性があります。これらのビタミンを含む食品(レバー、卵、緑黄色野菜など)を積極的に摂取しましょう。
  • ストレス管理:​ストレスは皮脂分泌を増加させ、症状を悪化させる要因となります。適度な運動やリラクゼーション法を取り入れ、ストレスを軽減しましょう。 ​
  • 十分な睡眠:​睡眠不足も皮膚の健康に影響を与えるため、規則正しい生活リズムを心がけ、十分な休息を取ることが重要です。 ​

3. 環境要因への対処

  • 紫外線対策:​紫外線は皮膚に刺激を与えるため、外出時には日焼け止めを使用し、帽子や日傘で直射日光を避ける工夫をしましょう。​
  • 適切な湿度の維持:​乾燥した環境は皮膚のバリア機能を低下させるため、室内では加湿器を使用するなどして適切な湿度を保つことが望ましいです。​

これらの対策を日常生活に取り入れることで、脂漏性皮膚炎の予防や症状の軽減が期待できます。

​しかし、症状が改善しない場合や悪化する場合は、早めに皮膚科専門医に相談することをお勧めします。

脂漏性皮膚炎にならないためのライフスタイル

脂漏性皮膚炎は日常の生活習慣と深く関係しており、症状を悪化させないためのライフスタイルの工夫がとても重要です。ファラド皮膚科でも、治療と並行して以下のような生活習慣の見直しを勧めています。

1. アルコール・喫煙を控える

アルコールやタバコは、皮膚の炎症を悪化させる要因のひとつです。血行を乱したり、皮脂分泌を増やしたりするため、脂漏性皮膚炎の悪化につながることがあります。症状が気になるときは、できる限り控えるのが望ましいでしょう。

2. ストレスをためない

ストレスは皮膚の免疫機能やホルモンバランスに影響し、脂漏性皮膚炎の再発や悪化を引き起こす原因になります。睡眠をしっかりとり、趣味の時間やリラックスできる習慣を取り入れることが大切です。

3. 睡眠・栄養バランスの確保

皮膚の健康を保つには、規則正しい生活が欠かせません。とくにビタミンB群(B2、B6など)は皮脂の代謝に関与しており、不足すると皮膚炎のリスクが高まります。栄養バランスのとれた食事を心がけましょう。

4. 洗顔・洗髪の工夫

患部の清潔を保つために、洗顔や洗髪は“しっかり・でもやさしく”行うことが大切です。洗い残しや強い刺激は炎症を悪化させるため、低刺激性の洗浄料を使い、よく泡立ててから優しく洗い流すようにしましょう。

これらの生活習慣の工夫は、脂漏性皮膚炎の再発予防や治療効果の維持にも役立ちます。

症状が落ち着いているときも、日々の習慣を見直しながら「コントロールして付き合っていく」姿勢が大切です。

脂漏性皮膚炎に関するよくある質問(FAQ)

脂漏性皮膚炎について、患者さんからよく寄せられる質問をまとめました。
症状や治療に関する不安を少しでも解消するために、ぜひ参考にしてください。

Q1. 脂漏性皮膚炎はうつりますか?

A. いいえ、うつりません。
脂漏性皮膚炎はマラセチア菌という皮膚常在菌が関与していますが、これは誰の肌にも存在している菌であり、感染症ではありません。他人にうつる心配はありません。

Q2. 治る病気ですか?

A. 完治は難しいですが、コントロールは可能です。
脂漏性皮膚炎は再発を繰り返しやすい慢性的な疾患です。ただし、適切な治療とセルフケアを継続することで、症状を抑えながらうまく付き合っていくことができます。

Q3. 皮膚科に行くべきタイミングは?

A. かゆみや赤み、フケが続く場合は早めに受診を。
「ただの乾燥かな」と見過ごしていると、症状が悪化するケースもあります。市販薬やセルフケアで改善しない場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。

Q4. ステロイド外用薬は使っても大丈夫?

A. 医師の指示に従えば問題ありません。
短期間で炎症を抑えるために有効ですが、自己判断で長期使用すると副作用のリスクがあるため、必ず医師の指導のもとで使用しましょう。

Q5. メイクや整髪料は使ってもいい?

A. 基本的にはOKですが、低刺激の製品を選びましょう。
肌への負担が少ない製品を選び、しっかり洗い流すことが大切です。症状が強く出ている部位は、メイクや整髪料の使用を一時的に控えるのもよいでしょう。

その肌トラブル、皮膚科ならもっとラクに向き合えるかもしれません

脂漏性皮膚炎は、かゆみ・フケ・赤み・皮むけなど、一見すると「よくある肌トラブル」に見えるかもしれません。

でも、「いつまでも治らない」「季節のたびに繰り返す」と感じているなら、それは皮膚の炎症=脂漏性皮膚炎のサインかもしれません。

この疾患は、正しい診断と適切な治療を受けることで、症状をうまくコントロールしながら生活することができます。

「どうせ治らないから」とあきらめる前に、まずは専門の皮膚科に相談してみてください。

市販薬やセルフケアではケアしきれない部分も、医師の診察によって原因が見つかり、あなたの辛さがスッと楽になることもあります。

日々のスキンケアや生活習慣の見直しも大切ですが、一番の近道は「一人で抱え込まないこと」

肌の不調を我慢する毎日から、一歩踏み出して、もっとラクな向き合い方を一緒に探してみませんか?

脂漏性皮膚炎のお悩みがある場合は、ぜひお気軽に当院までご相談ください。

脂漏性皮膚炎に関してもっと詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。

【上野御徒町ファラド皮膚科院長|上條 広章 監修】

この記事を書いた人

上條 広章

上野御徒町ファラド皮膚科 院長

上條 広章(かみじょう ひろあき)

  • 資格
    • 医学博士(東京大学大学院医学系研究科)
    • 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
    • 日本美容外科学会(JSAS)認定 美容外科専門医
    • 日本レーザー医学会専門医
  • 所属学会
    • 日本皮膚科学会
    • 日本美容外科学会(JSAS)
    • 日本美容皮膚科学会
    • 日本レーザー医学会
  • 受賞歴
    • 第7回日本皮膚悪性腫瘍学会賞(石原・池田賞)
    • 第20回マルホ研究賞
    • Poster Prize, 47th Annual Meeting of European Society for Dermatological Research

略歴

2012年 東京大学医学部医学科 卒業
2014年 藤枝市立総合病院 初期研修 修了
2014年 東京警察病院 皮膚科
2016年 東京大学医学部附属病院 皮膚科
2019年 東京大学医学部附属病院 皮膚科 助教
アトピー性皮膚炎専門外来、皮膚悪性腫瘍専門外来、レーザー専門外来担当
2021年 都内大手美容外科 入職
2022年 都内大手美容外科 本院 部長
美容皮膚科治療監修を担当
2022年 上野御徒町ファラド皮膚科 開院

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