色素沈着(炎症後色素沈着)とは

色素沈着とは、ニキビや湿疹、レーザー治療、日焼け、怪我などの炎症のあとに皮膚が茶色く見える状態です。医学的には炎症後色素沈着(PIH:Post-inflammatory hyperpigmentation)と呼ばれます。
皮膚に炎症が起こると、紫外線から皮膚を守るためにメラニン色素が増える防御反応が起こります。このメラニンが皮膚に残ることで、ニキビ跡や傷跡が茶色く見える状態になります。
色素沈着は多くの場合時間とともに改善しますが、見た目が気になるため早く治したいと相談される方も多い症状です。
色素沈着の主な原因
色素沈着は、皮膚に炎症が起こることでメラニンが増加し、そのメラニンが皮膚に残ることで起こります。原因として多いものには以下があります。
ニキビ・ニキビ跡
ニキビによる炎症が強い場合、治ったあとに茶色いニキビ跡として色素沈着が残ることがあります。
レーザー治療後
シミ取りレーザーなどの治療後には、一時的に色素沈着が起こることがあります。
湿疹・皮膚炎
アトピー性皮膚炎やかぶれなどの炎症が治ったあとに色素沈着が残ることがあります。
怪我・やけど・手術後の傷跡
皮膚のダメージが強いほどメラニン反応が強くなり、色素沈着が目立つことがあります。
また、炎症以外にも薬剤、ホルモンの影響、金属などによって色素沈着が起こることもあります。
色素沈着を予防する方法
色素沈着を防ぐためには、炎症後の皮膚に新しい刺激を与えないことが重要です。特に次の3つが大切です。
1. 紫外線対策
紫外線はメラニン生成を強く刺激するため、色素沈着を悪化させます。
対策としては
- 日焼け止めの使用
- 帽子や日傘
- 紫外線カットフィルム(エアウォールUV)
などが有効です。
紫外線は色素沈着を悪化させるだけでなく傷の治りを遅らせる原因にもなります。
2. 摩擦を避ける
慢性的な摩擦はメラニン生成を刺激します。
特に注意が必要なのは
- 強いマッサージ
- ナイロンタオル
- カミソリ処理
- こするスキンケア
などです。
3. 炎症を早く治す
ニキビや湿疹が長引くと色素沈着が起こりやすくなります。
ニキビが原因の場合は
- ベピオ
- ディフェリンゲル
などで新しいニキビを予防する治療を併用することが重要です。
色素沈着が起こりやすい人の特徴
色素沈着は誰にでも起こる可能性がありますが、特に以下の方では起こりやすいとされています。
肌の色が濃い方ではメラニン反応が強く出やすいため、炎症後色素沈着が目立ちやすい傾向があります。また、肝斑がある方や妊娠中の方ではホルモンの影響によりメラニンが増えやすく、色素沈着のリスクが高くなることがあります。
色素沈着はいつから出る?いつ治る?

色素沈着の経過は原因によって異なります。わかりやすい例としてシミ取りレーザー後の経過があります。
レーザー後の一般的な経過は次の通りです。
- 治療直後〜2週間
かさぶたができるため一時的に黒く見える - 1〜2ヶ月後
色素沈着が最も濃くなることがある - 3〜6ヶ月
徐々に薄くなる(顔の場合)
体では改善までの期間が長くなる傾向があります。
- 背中・胸・腕 → 1〜2年程度
- すね(下腿) → 2〜3年
特にすねの色素沈着は非常に長引きやすい部位です。
色素沈着とシミ・肝斑との違い
色素沈着はシミと混同されることがありますが、原因や特徴が異なります。
シミ(老人性色素斑)
- 紫外線や加齢が原因
- 境界がはっきりしている
- 徐々に拡大する
肝斑
- 両頬に左右対称
- 紫外線・摩擦・女性ホルモンが関与
- レーザーで悪化することがある
炎症後色素沈着
- ニキビやレーザーなど原因が明確
- 時間とともに薄くなることが多い
市販のスキンケア・美容液
色素沈着のセルフケアとしては、美白成分を含むスキンケアが役立つことがあります。特に、レチノール、ナイアシンアミド、トラネキサム酸などの成分は色素沈着の改善をサポートする可能性があります。
ただしレチノールは肌質によって刺激になることがあるため、敏感肌の方は低濃度から使用することが大切です。
色素沈着の治療
色素沈着の治療では、外用薬・内服薬・美容医療を組み合わせて行うことが重要です。早期から適切な治療を行うことで、色素沈着が改善するまでの期間を短縮できる可能性があります。
外用薬
ハイドロキノンはメラニン生成を抑制する作用があり、美白治療で広く使用されています。
トレチノインやレチノールは皮膚のターンオーバーを促進し、メラニン排出を促す作用があります。
ハイドロキノンやトレチノインについては美白外用薬(肌再生プログラム)のページもご参照ください。
また、グリコール酸や乳酸などのAHAはピーリング作用によって角質を整え、色素沈着の改善を助けます。トラネキサム酸、アゼライン酸、ナイアシンアミドは抗炎症作用と美白作用を持つ成分として用いられることがあります。ビタミンCも美白効果や抗酸化作用が期待できます。
内服薬
色素沈着の治療では、トラネキサム酸(トランサミン)やビタミンC(シナール)などの内服薬が使用されることがあります。
トラネキサム酸は色素沈着の発生を完全に防ぐわけではありませんが、色素沈着が薄くなるまでの期間を短縮する可能性が報告されています。
美容医療による治療

皮膚科・美容皮膚科では、色素沈着に対してピーリングや美白治療を行うことがあります。
リバースピール
トリクロロ酢酸やコウジ酸、フィチン酸、サリチル酸などを組み合わせたピーリングで、色素沈着やくすみに対して肌の深さに応じてアプローチできます。
トラネキサム酸局所注射(シミ取り注射)
トラネキサム酸を直接注入する方法で、レーザー後の色素沈着を予防する目的で併用されることもあります。
また、
- サリチル酸ピーリング
- ハイドラフェイシャル
- マッサージピール
- ケアシスSによるレナトスTaプラス(トラネキサム酸)導入
などの治療も、肌状態に応じて選択されることがあります。
目周り・デリケートゾーンの色素沈着
目の周りでは、まつ毛美容液や湿疹などが原因で色素沈着が起こることがあります。この場合は、刺激の少ないトラネキサム酸クリームや低濃度ハイドロキノンによるケアが行われます。
脇や股、乳頭などのデリケートゾーンでは、ハイドロキノンによる美白治療が基本となり、肌の状態を確認しながらトレチノインを併用することで改善が期待できる場合もあります。
色素沈着へのレーザー治療
炎症後色素沈着の多くは表皮にメラニンが存在する状態のため、レーザー治療を行うと刺激となり、かえって色が濃くなることがあります。そのため、色素沈着ではレーザー治療が第一選択にならないことが多いです。
ただし時間が経過した色素沈着では、メラニンが真皮に移動していることがあり、この場合はレーザー治療が有効になることもあります。そのため、メラニンの深さを診察で判断することが重要です。
色素沈着が治らない場合
色素沈着がなかなか改善しない場合、皮膚の炎症が完全に治っていない可能性があります。特にアトピー性皮膚炎などでは炎症が残っていると色素沈着が長引くことがあります。
その場合はまずステロイド外用薬やタクロリムス外用薬で炎症を十分に抑えることが大切です。ニキビ跡の場合も、ニキビ治療を行いながら色素沈着の治療を進めることで改善が期待できます。
色素沈着・肝斑治療の当院症例
症例 【30歳代女性】頬の肝斑・色素沈着

頬の肝斑に対して、他院でピコレーザー照射を行い色素沈着として濃くなってしまった方です。その後、ピコトーニングを10回以上行うも改善なく当院を受診されました。ホルモン薬を内服中でトラネキサム酸が飲めず、リバースピールとトラネキサム酸注射で肝斑と色素沈着が薄くなりました。
| 施術・費用 | リバースピール両頬 1回 22,000円 トラネキサム酸局所注射 1回 33,000円 本症例では、総額55,000円 |
|---|---|
| リスク | 赤み・皮むけなど |
※料金はすべて税込みです
よくある質問
色素沈着とは何ですか?
色素沈着とは、ニキビや湿疹、レーザー治療、怪我などの炎症のあとにメラニン色素が増えて皮膚が茶色く見える状態です。医学的には炎症後色素沈着(PIH)と呼ばれます。
色素沈着は自然に治りますか?
多くの色素沈着は時間とともに自然に薄くなります。
ただし紫外線や摩擦、残った炎症があると長引くことがあります。
色素沈着はどのくらいで消えますか?
改善までの目安は次の通りです。
- 顔:3〜6ヶ月
- 背中・腕:1〜2年
- すね:2〜3年
体の色素沈着は顔より治るまで時間がかかります。
ニキビ跡の色素沈着は治りますか?
ニキビ跡の色素沈着は多くの場合3~6ヶ月程度(顔の場合)で改善します。
ただし新しいニキビができると悪化するため、ニキビ治療と併用することが重要です。
レーザー後の色素沈着はなぜ起こるのですか?
レーザーによる炎症に対する防御反応としてメラニンが増えるためです。これを炎症後色素沈着といいます。
レーザー後の色素沈着はいつ治りますか?
多くの場合は3〜6ヶ月ほどで徐々に薄くなります。
体の場合は1年以上かかることもあります。
色素沈着を早く治す方法はありますか?
皮膚科では次の治療が行われます。
- ハイドロキノン外用
- トレチノイン外用
- トラネキサム酸内服
- ケミカルピーリング
これらを組み合わせることで改善を早めることが期待できます。
色素沈着にハイドロキノンは効果がありますか?
ハイドロキノンはメラニン生成を抑える作用があり、色素沈着やシミの治療に広く使われています。
色素沈着にトレチノインは効果がありますか?
トレチノインは皮膚のターンオーバーを促進し、メラニン排出を促す薬です。ハイドロキノンと併用されることが多い治療です。
色素沈着にレーザー治療は有効ですか?
炎症後色素沈着ではレーザーが刺激となり悪化することがあるため第一選択ではありません。
ただし長期間経過した色素沈着では有効な場合もあります。
色素沈着にピーリングは効果がありますか?
ピーリングは古い角質を除去しメラニン排出を促すため、色素沈着の改善を助けることがあります。
色素沈着を悪化させる原因は何ですか?
主な原因は次の通りです。
- 紫外線
- 摩擦
- 炎症の持続
- 強いスキンケア
特に紫外線と摩擦は悪化の大きな原因になります。
紫外線は色素沈着を悪化させますか?
紫外線は肌に炎症を起こし、メラニン生成を刺激するため、色素沈着を濃くする原因になります。
摩擦は色素沈着の原因になりますか?
皮膚をこする刺激は肌に炎症を起こし、メラニン生成を促すため、摩擦は色素沈着の原因になります。
色素沈着は市販薬で治せますか?
軽度の色素沈着であれば、市販のトラネキサム酸・ナイアシンアミド・ビタミンC配合美容液といった美白化粧品やレチノール製品で改善することがあります。
色素沈着におすすめのスキンケア成分は?
次の成分がよく使われます。
- レチノール
- ナイアシンアミド
- トラネキサム酸
- ビタミンC
ワキの色素沈着は治りますか?
ワキの色素沈着は
- 摩擦
- カミソリ処理
- 炎症
- ホルモン
などが原因で起こります。ハイドロキノンやトレチノインで改善することがあります。肌がデリケートな場所のため、肌への刺激に注意して使用がおすすめです。
デリケートゾーンの色素沈着は治療できますか?
可能です。主に
- ハイドロキノン
- トレチノイン
- トラネキサム酸
- サリチル酸
などの美白治療が行われます。肌への刺激に注意して使用してください。
目の周りの色素沈着はどう治療しますか?
目周りは皮膚が薄いため、
- 低濃度ハイドロキノン
- トラネキサム酸外用
など刺激の少ない治療を行います。
手や腕の色素沈着は治りますか?
手や腕の色素沈着も時間とともに改善することが多いですが、顔より治るまで時間がかかることがあります。
背中の色素沈着は治りますか?
背中の色素沈着はニキビ跡が原因のことが多く、ピーリングや外用治療で改善することがあります。
すねの色素沈着が治らないのはなぜですか?
すねは血流が滞りやすく、また肌のターンオーバーが遅いため、色素沈着が治るまで時間がかかりやすい部位です。
色素沈着がなかなか治らない原因は?
次の原因が考えられます。
- 炎症が残っている
- 紫外線
- 摩擦
- 肌のターンオーバー低下
スキンケアやお薬でこちらを対処することが色素沈着解決の近道です。
アトピーで色素沈着は起こりますか?
アトピー性皮膚炎では炎症が繰り返されるため、色素沈着が起こりやすいです。色素沈着の治療とともに、湿疹の炎症をステロイドやタクロリムス外用薬などでコントロールすることも大切です。
虫刺されの色素沈着は治りますか?
虫刺されの色素沈着も時間とともに薄くなることが多いですが、掻いたり擦ったりすると長引くことがあります。虫にさされたらすぐにお薬を塗るなど早めの対処がおすすめです。
妊娠中は色素沈着が起こりやすいですか?
妊娠中はホルモンの影響でメラニンが増えやすくなるため色素沈着が起こりやすくなります。妊娠中に使用可能な成分としてはアゼライン酸クリームやグリコール酸があります。
色素沈着ができやすい人はいますか?
次の方は起こりやすいとされています。
- 肌の色が濃い方
- 肝斑がある方
- 妊娠中の方
色素沈着を予防する方法は?
予防には次の対策が重要です。
- 紫外線対策
- 摩擦を避ける
- 炎症を早く治療する
色素沈着は皮膚科に相談したほうがいいですか?
長期間治らない場合や急に増えた場合は、シミや皮膚腫瘍など別の病気の可能性もあるため皮膚科受診をおすすめします。
色素沈着を早く治したい場合はどうすればいいですか?
皮膚科では
- 外用薬
- 内服薬
- 美容施術
を組み合わせた治療が可能です。自己判断よりも早めに専門医に相談することで改善を早められる場合があります。
まとめ


色素沈着は、ニキビや湿疹、レーザー治療後などの炎症によって起こるメラニン増加による皮膚の色の変化です。多くの場合は自然に薄くなりますが、紫外線対策や摩擦を避けることが予防のポイントになります。
また、色素沈着が気になる場合は、外用薬・内服薬・美容施術を組み合わせることで改善を早めることが期待できます。
当院では、患者様の肌状態に合わせてホームケア・内服治療・美容施術を組み合わせた色素沈着治療を行っています。色素沈着を早く改善したい方は、お気軽にご相談ください。
【参考文献】
- Chen T, Xue J, Wang Q. Tranexamic Acid for the Treatment of Hyperpigmentation and Telangiectatic Disorders Other Than Melasma: An Update. Clin Cosmet Investig Dermatol. 2024 Sep 25;17:2151-2163. PMID: 39350932.
- Rutnin S, Pruettivorawongse D, Thadanipon K, Vachiramon V. A Prospective Randomized Controlled Study of Oral Tranexamic Acid for the Prevention of Postinflammatory Hyperpigmentation After Q-Switched 532-nm Nd:YAG Laser for Solar Lentigines. Lasers Surg Med. 2019 Dec;51(10):850-858. PMID: 31302943.
- 日本形成外科学会 診療ガイドライン ※PDFファイルが開きます
- MSDマニュアル 色素沈着



